石材店・石・建築石材『全国建築石材工業会』
 


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(1)基本システム
乾式工法は、軽量化、工期短縮、剥離防止、耐震件や耐風圧性を満 たすために 開発された 工法である。図1。 耐震性能を確保する方法には、 ロッキング方式(上・下の石をダボピンで継ぐ)とスウェー方式(上・下の石が別々に動くことで地震力を逃がす)の2通りある。スウェー方式の方がより耐震性に優れるが、金物のコストがロッキング法式の2倍になり、取り付け単価も3割程高くなる。どちらも耐帳性に優れた、工法であり、 安全基準を満たしたファスナーを使用すれば、阪神・淡路大震災クラスでもほとんど無傷である。

図1 乾式工法システム
@1次ファスナー方式(参考)
L字型の1次ファスナーに前後と垂直の調節用のボルトやアンカー取り付け用の穴がルーズになっているので、高さと左右の調節はそこで行う。張り代が50mmと少なくてすむが、施工精度のバラツキが大きい
A2次ファスナー方式
L字型の1次金物と平らな2次金物をアンカーで躯体に取りつけ、石は2次金物に取りつける。1次金物と2次金物の接合部のルーズホールで前後左右を調整する。高さと方向の調節は1次方式と同じ。張り代は70mm以上となるが、施工精度は安定する 

防水性に関してはシール目地となるため期待できない。シール目地をカットしてて水抜き用のパイプを設けるなど、設計段階から処理をしておく必要がある。 なお、施工順を図2にまとめたので参考にしてほしい。

図2 乾式工法の施工手順
1.水糸を張る
  ・1段目の石の天端になる位置に陸墨と通り心墨から計り出して張る
2.根石の位置決め
  ・根石(1段目の石)を水糸に倣って位置決めする
  ・下端は躯体なので垂直方向は石ごと下げ振りで確認するか躯体に仕上げ墨を
   出して、それに倣う
3.仮留め・固定
  ・根石裏側の呑みこみ部分の高さに裏込めモルタルを入れて下端を固定
4.裏込めモルタル挿入
5.2段目以降は1〜3の繰り返し
  ・2段目以降の石は、下端の出入りは下段の石の天端に合わせて、
   天端は水糸に合わせればよい

(2)納まりの注意点
乾式工法の割付けは芋目地にすべきである。馬目地は芋目地に比べて耐震性能がかなり落ちるからだ(スウェー方式の金物を使えば別)。また出隅および柱型の納まりは、コーナー役物は幅が100o程度なので、専門ファスナーが使用できず、ステンレス線で躯体や左右の石に緊結するといった従来の方法が採られるからだ。同じく留め加工も避けたい。石は硬い反面非常に脆いので、鋭角の部分に小さな欠けが生じやすくなる。

図3 足元の納まり

足元は、地震時に床の動きと壁の動きが
異なることがあるため、目地を大きめに
切って、シーリングを施す必要がある
笠石と壁や仕上がりの取合いは、笠石のチリを10oくらいとるとよい。施工誤差や加工誤差を吸収でき、きれいに仕上がる。足元廻りは最も工夫が必要なところである。乾式工法は地震時に、張り石がある程度躯体と別に動けるため、躯体と直結している床とは動きが別になる。その結果、床と壁の石が衝突して破壊される可能性が非常に高くなる。阪神・淡路大震災の際にも、外壁の足元廻り被害が最も多かった。対策としては、床面と壁面の取り合いに大きめのシール目地(10〜15o。深さは壁石の呑込み深さと同じ)をとるのとよい(図3)
 
なお、根石(一番下の段の石)は、呑込み部分に裏込めモルタルを入れて固定している。乾式工法といいながらもここだけは湿式なのだ。より完全な乾式工法にするならば、根石の下端も金物を使った方がよいが、施工的にかなり手間を要す。金物で留めるなら図面に明記しておく必要がある。ほとんどの建築石材業者は裏込め方式で見積りをするからだ。